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Interview

原心平が紡ぐ“街と岩のあいだ”のストーリー

クライミングは、単なるアクティビティではなく「生き方」だと語るのは、4c studiosのデザイナー・原心平さん。都市と岩場、日常と挑戦、その狭間に生きるクライマーのためのアパレルを提案し、オーダーメイドシステムで一人ひとりの物語を紡いでいます。

「シンプルは決して簡単じゃない」という信念のもと、原さんはデザインの本質を追求し続けています。今回のインタビューでは、4c studiosの誕生秘話から、オーダーメイドシステムに込めた思い、そして4c studiosが目指す未来まで、デザインと生き方を重ね合わせた原さんの哲学に迫ります。

自己紹介をお願いします。お仕事や取り組まれているビジネス・プロジェクトについて教えてください。

4c studiosのデザイナー、原心平です。4c studiosはクライミングのカルチャーや思想を出発点とし、「街と岩のあいだ」をデザインコンセプトに掲げ、考え、さすらい、静かに抗う人のための服をデザインします。クライミングに必要な機能性と都会的なミニマルデザインを融合させながら、作り手と着る人が直接つながる、Made-to-Order(カスタムオーダーメイド)システムを採用し、一人ひとりのストーリーをデザインし、形にすることを大切にしています。

また、4c studiosの活動以外にも、主にアパレルの分野においてのサーキュラーエコノミー(循環型経済)を目指す会社を仲間と立ち上げました。ブランドやメーカー、地域のコミュニティと共創しながら、リペア、リユース、アップサイクルなどの企画、イベント運営、コンサルティング等にも取り組んでいます。

「街と岩のあいだ」というコンセプトはどのように生まれたのでしょうか。その背景にあるインスピレーションを教えてください。

クライミングは、私にとって生き方そのものであり、思想とデザイン表現とも深く結びついていることを認識しました。日常の中に溶け込んだクライミング、何か特別な行いではなく、自然な営みとしてのクライミング。そんな考えが私の中に育まれた時、街と岩場を行き来するライフスタイルの中に漂う感情や情景をデザイン表現するということに、挑戦と想像を見出せると考えました。

また、写真家GLEN DENNYの『YOSEMITE IN THE SIXTIES』や、JOHN LONG & DEAN FIDELMANの『THE STONE MASTERS』に描写されたクライマーたちの姿からも大きな影響を受けました。彼らの生き方や美学が、4c studiosのコンセプトにも深く根を下ろしています。

以前お聞かせいただいた4c studiosのデザインコンセプトの中で、「シンプルは決して簡単、単純ではない」という言葉が印象的でした。この言葉に込めた思いや、デザインプロセスについてお聞かせください。

「シンプル」にたどり着くまでには、実は多くの思考のプロセスを経ています。私は非常に内省的な人間で、物事を単純化してみたり、表層的なシンプルをデザインに落とすことができません。時間をかけて、様々な人格を持つ自分自身と対話を重ね、4c studiosで必要とされる要素を拾っていく、そんなプロセスを重ねています。このデザインは4c studiosのコンセプトに本当に沿っているか?機能性とクールなデザインは両立できているか?このデザインは人に伝わり、共感してもらえるか?そんなことを自問自答する毎日です。簡単には答えられないことがほとんどなのですが、「シンプル」の領域に辿り着くためには必要なプロセスだと感じています。

作り手と着る人を繋げるオーダーメイドシステムは、4c studiosにとって大切な要素ですね。このシステムを通じて得た学びや印象的なストーリーを教えてください。

お客様と直接対話しながらデザインを完成させることで、服というプロダクトを超えた新たな価値を提供できると感じています。4c studiosのお客様は単なる消費者ではなく、デザインプロセスの一部を担う存在です。自分で選び、関わることで生まれる愛着が、着ることの意味を深めていると思います。お客様はその体験を通じて、デザインを楽しんでいるように感じます。一人一人のお客様にそれぞれのデザインストーリーがあるのですが、私もそこから新しいデザインの着想を得たり、会話の中からクライミングそのものの技術的な学びや発見、また哲学を広げることができています。こうした対話の中で、4c studiosのデザインは進化していくのだと実感しています。

昨年末までパタゴニアで勤務されておりましたが、パタゴニアでの経験が現在の4c studiosのものづくりにどのような影響を与えていますか。

パタゴニアでの学びは数え切れませんが、特に大きく影響を与えているのは以下の4つです。一つ目は、クライミングの哲学や技術を深く理解し、多くのクライマーの生き方に触れる機会を得たこと。二つ目は、お客様とのコミュニケーションの重要性を学び、ブランドビジョンをどのように伝え、共感してもらうかを考える習慣が身についたこと。一人一人に耳を傾け対話することの大切さを学びました。三つ目は、少し先の未来を描きながら、デザインやサービスに落とし込む視点を得たこと。最後に、何より「誠実であること」。自分自身、デザイン、プロダクト、お客様に対して、常に誠実である姿勢が大切だと実感しました。これらの学びが、現在の4c studiosのブランド哲学にも大きく影響を与えています。

現在、「TYPE」を洗練させるアプローチを取られていますが、今後どのように進化していくと考えていますか。ブランドとして目指す未来を教えてください。

「TYPE」の洗練を続けることはもちろん、オーダーシステムをより多くの人にとって身近なものにする方法を模索しています。クライミングを軸にしながらも、より私自身の哲学や価値観を反映したデザインや製品を展開していく予定です。

また、2025年春にはブランド名を「4c」から「4c studios」に改め、アパレルの枠を超えた新たなデザインやアート表現にも挑戦しています。ぜひ、今後の4c studiosの展開にもご期待ください。

原さん、貴重なお話をありがとうございました!シンプルなデザインにたどり着くまでの奥深い思考プロセス、オーダーメイドという体験を通じて生まれる新たな価値など、4c studios の哲学を存分に感じることができました。4c studios の商品や最新情報は、原さん(@shimpeihara)および4c studios(@4c_climbing)のアカウントをチェックしてみてください。

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